「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」
視察記 vol.2
学術研究都市への挑戦!
糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)構想
前回の「Fukuoka Growth Next(FGN)」のレポートに続き、今回は視察2日目の模様をお届けします。
一行は福岡市中心部を離れ、西へ移動。豊かな自然と歴史が息づく糸島市へと向かいました。
今回のテーマは、ゼロから新しい学術研究都市をつくるという壮大なプロジェクト「糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)」。
まずは、糸島市 経済振興部 学研都市づくり課・姫野康隆 課長補佐より、SVIの概要とそこに至る背景についてご説明いただきました。
「世界で3番目に輝く小さな街」糸島市のポテンシャル
会場となったのは、九州大学伊都キャンパスのすぐ西側に位置する「SVI実証実験センター」。
実はこの建物、かつてはゴミ焼却場の管理棟として使われていました。
FGNが小学校をリノベーションしていたのと同様に、ここでも既存の施設を新たなイノベーションの拠点として再生させている点に、福岡エリアに通底する「あるものを活かす」精神を感じます。


姫野氏によると、福岡市の西隣に位置する糸島市は、人口約10万4,000人の都市でありながら、真鯛の漁獲量日本一を誇る豊かな自然と、福岡空港や博多駅まで電車一本で約40分という利便性を兼ね備えています。
その魅力は国際的にも高く評価されており、英情報誌『MONOCLE』の「輝く小さな街ランキング」で世界第3位(2021年)に選出されるほどです。
そして、SVIを語る上で欠かせないのが「九州大学」の存在です。
単一キャンパスとしては日本一の広さ(272ha)を誇る伊都キャンパスには、約1万8,000人の学生・教職員が集っており、強大な「知の拠点」が隣接しています。

なぜ今、「サイエンス・ヴィレッジ」なのか?

一見、順風満帆に見える糸島市ですが、姫野氏は地域が抱える「頭脳流出」という課題を指摘します。
九州大学には優秀な理系学生が多く在籍していますが、卒業後の就職先として、大企業が集まる東京や大阪へ流出してしまうケースが大半です。
「大学の研究成果を社会実装する場や、学生が働きたいと思える受け皿が地域に足りていない」。この課題感こそが、産学金官が連携して新たな学術研究都市をつくるSVI構想の出発点でした。
「まちづくりを研究・実装するまち」への挑戦
SVIが目指すのは、単なる企業誘致のための工業団地ではありません。「まちづくりそのものを研究・実装するフィールド」をゼロからつくろうとしているのです。

その第一歩となるのが、今回訪れた「はじまりの地(旧清掃センター跡地)」です。
ここでは現在、行政主導ではなく、民間企業が主導する形で以下のような先端技術の実証が進められています。
● ローカル5Gの整備:通信キャリアに依存しない自営の5Gネットワークを構築し、自動配送ロボットの走行実験などに活用されています。
● 直流(DC)マイクログリッド:太陽光発電で作った電気を、「直流」のまま融通し合う高効率なエネルギーシステムの実証が行われています。
● スマートポールの設置:通信(5Gアンテナ)とエネルギー(給電機能)、センサーやカメラを搭載した多機能ポールを設置し、街のインフラとしての可能性を検証しています。
これらが「一般社団法人SVI推進協議会」という民間組織を中心に推進されている点は特筆すべきでしょう。
通信、エネルギー、建設、金融など多種多様な企業が、互いの技術を持ち寄って「未来のインフラ」を共創しています。
企業の熱意を形にする「企業版ふるさと納税」
この壮大なプロジェクトを支える資金スキームにも工夫があります。SVIでは「企業版ふるさと納税」が活用されているのです。
企業側は税制優遇を受けながら地方創生に寄与でき、自治体側は財源を確保できるというWin-Winの関係が築かれています。
姫野氏の「行政がお膳立てした『完成された街』ではなく、企業や研究者が一緒になって『実験しながらつくっていく街』だからこそ、イノベーションが生まれる」という言葉には、強い説得力がありました。


次回予告:いざ、未来の実装現場へ!
概要説明でSVIの全体像を掴んだ一行は、続いてパネルディスカッションへと移ります。
テーマは「糸島SVI創設に向けた当時の取組と今後の展望について」。
次回の記事では、この前例のないプロジェクトがどのようにして立ち上がり、数々のハードルを乗り越えてきたのか、その「始まりの物語」をレポートします。どうぞお楽しみに。