「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」
視察記 vol.3
「イノシシに5Gを届けるのか?」SVI創設キーマン対談

2025/12/19
「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」視察記 vol.3 「イノシシに5Gを届けるのか?」SVI創設キーマン対談(本番非公開)

「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」視察レポートの第3弾をお届けします。
糸島市による「糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)」の概要説明に続き、会場ではSVIの立ち上げ期から深く関わるキーマンお二人によるパネルディスカッションが行われました。

テーマは「糸島SVI創設に向けた当時の取組と今後の展望について」。ゼロからインフラを作るという前例のないプロジェクトは、一体どのようにして始まったのか。そして、次世代通信技術は地域をどう変えていくのか。当時の裏話を交えながら語られた、熱いトークセッションの模様をレポートします。

通信とITのプロフェッショナルによるディスカッション

今回のパネルディスカッションに登壇されたのは、こちらの御二方です。

左から岡村 俊幸 氏、高野 雅晴 、稲越 誠 氏

● 高野 雅晴(株式会社ビットメディア 代表取締役 / 一般社団法人SVI推進協議会 社員)

IT・クラウドを活用したサービス開発に長年従事。インフォシティグループとして、Tokyo NEXT 5G Boosters Projectの開発プロモーターにも採択されています。

● 岡村 俊幸 氏(JRCエンジニアリング株式会社 代表取締役社長)

通信技術の開発に携わるスペシャリスト。かつて日清紡ホールディングス株式会社にて新規事業を統括されており、当時から高野氏とは深い親交があります。JRCエンジニアリング株式会社は、令和5年度のTokyo NEXT 5G Boosters Projectの開発プロモーターに採択されています。

モデレーターは、本視察のオーガナイザーを務める合同会社デロイト トーマツの稲越 誠 氏が担当しました。

SVI参画のきっかけは「ローカル5G」の夜明け

対談は、二人がSVIに関わることになったきっかけからスタートしました。

時計の針を戻すと2019年頃。日本ではちょうど「ローカル5G」という新しい制度が始まろうとしていた時期です。これは通信キャリア以外の自治体や企業が、自らの敷地内で専用の5Gネットワークを構築できるという画期的な制度でした。

当時、高野氏は「電力の地産地消と同じように、電波も地域資源として自分たちでコントロールできる時代が来る」と直感していたといいます。
一方、日清紡で通信事業の新規開拓を模索していた岡村氏は、技術的な準備はできていたものの、「5Gの広帯域・低遅延を活かせるキラーコンテンツが何なのか」「莫大なインフラ投資をどう回収するか」というビジネスモデルの壁に直面していました。

そんな二人が、コロナ禍の合間を縫って渋谷の蕎麦屋で会食をした際、高野氏が「糸島でローカル5Gの実証をやってみませんか?」という話を持ちかけたのがすべての始まりでした。

「土管屋」からの脱却と、何もない場所での挑戦

当時のSVI予定地(現在の「はじまりの地」)は、草木が生い茂る未開拓のエリアでした。
岡村氏は笑いながら当時を振り返ります。「高野さん、ここに電波を吹く(※電波を送ったり届けたりする意味の業界用語)んですか?受けるのはイノシシでしょうか?と(笑)。最初は本当にそんな状態でした」


しかし、岡村氏はそこに逆説的な可能性を感じました。
これまでの通信事業者は、データを流す「土管(インフラ)」を提供することに徹し、中を流れる水(データ)には関与していませんでした。しかし、自分たちで限定的なエリアにネットワークを構築するSVIの環境であれば、流れるデータの解析や活用まで踏み込めるのではないか。

「やってみたらできると分かった瞬間にエンジニアは興味を失うが、ここはまだ課題だらけで面白い」。

そう感じた岡村氏は、まずはアンテナを立て、電波を吹いてみるという決断を下しました。

こうして、何もない山の中に最先端の通信インフラが立ち上がり、実証実験が動き出したのです。

「まちの当事者」としてインフラを考える未来

最後に、今後の展望についてお二人が語りました。

岡村氏は、JRCエンジニアリングの拠点がある東京都三鷹市でも、糸島で得た知見を活かしてスタートアップ支援や地域課題解決のアドバイスを行っているそうです。
「企業としては利益も重要ですが、スタートアップのような尖った人たちとどう共創していくかが課題であり、面白さでもあります。とにかく打席に立ち続けることが大事」と、継続的な挑戦の重要性を強調されました。

高野氏も、「SVIの『良きまちをつくる』という目的はブレていない」としつつ、まだ生活を支えるインフラとしては道半ばであると語ります。
「重要なのは、自分たちが『まちの当事者』として、インフラレイヤーからまちづくりを研究・実装すること。この成果を東京に持ち帰り、Next 5Gのプロジェクトにも繋げていきたい」と、力強く締めくくられました。

次回予告:いよいよフィールドへ! 実装現場の「今」を目撃する

熱い想いから始まったSVIの取り組み。
次回はいよいよ、実際に「はじまりの地」を歩き、お二人が語ったローカル5Gアンテナや、直流給電システム、そして実際に稼働している様々な実証機器を目の当たりにします。
次回のレポートもぜひご期待ください。

この記事につけられているタグ

5Gローカル5G高野雅晴ビットメディア糸島サイエンス・ヴィレッジTokyo NEXT 5G Boosters Project次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業JRCエンジニアリング一般社団法人SVI推進協議会インフラ岡村 俊幸稲越 誠デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社