「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」
視察記 vol.4
実装の現場!はじまりの地で「未来のインフラ」
「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」視察レポート、いよいよ最終回です。
パネルディスカッションでは、株式会社ビットメディアの高野 雅晴と、JRCエンジニアリング株式会社の岡村 俊幸氏から、糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)立ち上げの裏話を聞くことができました。
実はお二人は、SVIの運営メンバーであると同時に、東京都が実施する本事業「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」において、スタートアップを支援する「開発プロモーター」としても重要な役割を担っています。
● 高野 雅晴(株式会社ビットメディア 代表取締役 / 一般社団法人SVI推進協議会 社員)
本事業の前身事業である「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosteres Project)」において、プロモーターとして参画し、東京で生まれた先端技術を、糸島という実証フィールドで社会実装する流れを作り出してきました。その後、再度、インフォシティグループとして、令和7年度(2025年度)の開発プロモーターにも採択されています。
● 岡村 俊幸 氏(JRCエンジニアリング株式会社 代表取締役社長)
令和5年度(2023年度)より開発プロモーターとして参画。通信機器メーカーとしての強みを活かし、次世代の防犯・見守りインフラなどの開発を推進しています。
今回見学する「スマートポール」は、まさにその支援の成果として糸島の地に実装されたものです。
このお二人と共に、一行はSVIの実装フィールドへと足を踏み入れました。
一見すると草木に囲まれたのどかな風景ですが、目を凝らすと、未来の都市インフラの種が確かに芽吹いていました。
見学ポイント①:糸島から始まるエネルギー革命「直流給電実証実験」
まず私たちが目撃したのは、SVIが掲げる「エネルギー革命」です。

ここでは、太陽光パネルで生み出された再生可能エネルギーを、従来の交流(AC)に変換することなく、「直流(DC)」のままダイレクトに活用する実証実験が行われています。
通常、電気は送電のために変圧器で交流に変換されますが、その過程で多くのエネルギーロスが発生してしまいます。SVIでは、発電した電力をそのまま直流で機器に供給することで、エネルギーの地産地消と高効率化を実現しようとしています。
この「直流給電」の仕組みは、EVチャージャーや街のインフラ機器への給電に応用されており、まさにエネルギー利用のあり方を根本から変える挑戦と言えるでしょう。


無償貸与の電気自動車C+pod(シーポッド)への直流給電
見学ポイント②:ローカル5Gと各種センサーで「まちの可視化・最適化」を図る
続いての見学ポイントは、フィールド内に設置された「スマートポール」と、それを支える「ローカル5G」です。

ここでのポイントは、単にポールが立っていることではありません。
SVI推進協議会自らが通信免許事業者となり、限定されたエリア内で超高速・低遅延な専用ネットワーク「ローカル5G」を構築。このネットワークで、スマートポールから街路灯カメラの映像解析や人流解析などに必要な大容量のデータ伝送を行うことが可能となり、都市の安全性と利便性の向上に貢献します。
そして糸島SVIでの実証実験モデルでは、基本的な通信機能に加え、以下の先進的な機能を実装しています。
● 直流マイクログリッド構想に対応した電力供給システムによるクリーンエネルギーを効率的に活用する省エネ設計、DC380V入力におけるアーク対策を内蔵しているために安全設計を実現しています。
● 各種気象センサーの搭載により、日照量や気温などの環境データと発電量の相関関係を分析することで、より効率的なエネルギー活用に向けた知見の獲得を進めています。
これら膨大なデータをデータサーバに集約し、AI等で解析することで、街全体の状態を「見える化」し、最適に制御する。そんな未来の都市OSの原型が、ここで動いていました。
見学ポイント③:地域交通を変えるシェアモビリティ「TOCKLE」
さらに、このフィールドでは「移動」に関する新たな取り組みも見学できました。
BRJ株式会社が展開するシェアモビリティサービス「TOCKLE(トックル)」です。
「TOCKLE」は、電動キックボードや3輪モビリティなどを活用し、バスや電車を降りてから目的地までの「ラストワンマイル」を埋める移動手段です。
都市部だけでなく、地方特有の「交通空白地帯」の解消を目指して展開されており、ここ糸島のようなエリアでも、観光や生活の足として期待されています。
アプリで簡単にレンタル・返却ができ、GPSによる走行エリア制御(ジオフェンシング)などの安全機能も搭載。
SVIのような新しい街づくりにおいて、インフラ(通信・電力)とセットでこうした「モビリティ」が実装されることで、人の流れや生活スタイルそのものが変わっていく予感を感じさせました。


東京と福岡・糸島、それぞれの役割
2日間の視察を通じて見えてきたのは、福岡、そして糸島が持つ、異なる強みのシナジーです。
● 福岡市: 「グローバル創業・雇用創出特区」として、福岡市の強力な支援と民間企業の連携という強固な下地があります。スタートアップが生まれ、育つためのエコシステムが確立されています 。
● 糸島市: 福岡市へのアクセスが良好でありながら、新鮮な海の幸・山の幸などの豊かな自然を享受できる、移住先としても人気のエリアです 。何より、九州大学伊都キャンパスを擁しており、実証実験においては大学との強力な協力体制を築けることが最大の強みです 。
SVIのフィールドは、決して「何もない場所」ではありませんでした。
豊かな自然と、九州大学という知の集積、そして福岡市のエコシステムという盤石な基盤があるからこそ、ゼロベースで未来のインフラを描くという野心的な実験が可能になるのです。

今回の「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」の視察は、このポテンシャルを知る重要な機会となりました。